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自分史との違い

1.後世への役立ち

『継伝』という言葉を初めて聞く方がほとんどだと思います。

これまで一般の方の足跡を残す書物といえば『自分史』。
しかし、現在世の中に出回っている自分史というのは、ただ生い立ちを時系列に綴ってあるものであり、それは著者とよほど身近な人でしかも普段本を読み慣れている人でないと、なかなか読むことが難しいものです。つまり、読み手側ではなく、書き手側の目線に立って構成された書物が一般的となっています。

人間の暮らしというのは過去の歴史や培われてきた文化、蓄積された知恵といった人々の足跡の上に成り立っているため、本来人それぞれの足跡を残す事はとても大切で、しかもそれは血のつながりの強い親族においてより意味を増すものなのです。
しかし、せっかく足跡を残しても、人の目に触れなければ全く意味がありません。

『継伝』というのは、一般的な『自分史』とは異なり、子孫にとって役立つ内容や道しるべとなりうる内容を、テーマ分け・スナップ写真の多用・子供でも読める字の大きさにするなどして、読み手にとって、最大限読みやすく、且つ読みたくなる構成で仕立てた書物なのです。

『今より数10年後、後の文明の世では、今我々が古人を尊敬するように、
そのときの人たちが我々の恩恵を感謝するようになっていなくてはならない。
要するに、われわれの仕事というのは、今日この世の中にいて、われわれの生きた
証を残して、これを長く後世の子孫に伝えることにある。これは重大な任務である。』

~ 福澤諭吉『 学問のすゝめ 』(斎藤孝 現代語訳)より ~

『富は是一生の財、身滅すれば即ち共に滅す。
智は是万代の財、命終れば即ち随って行く。』

(訳)富は、自分が生きている間は大切なものですが、死んでしまえば墓の中まで持っていけるものではありません。それに対して智恵は、万代も後まで残るものであり、自分が死んでも子孫へと受け継がれていくものです。

 ~ 『 実語教 』より ~
(平安時代末期から明治初期にかけて普及していた庶民のための教訓を中心とした初等教科書)

2.想いをつなぐ

人間というのは一番の関心を持つ対象は自分です。当たり前の事ですが、自分にとって自分がどうなっていくかが一番の関心事であり、自分がある程度満足して、初めて人の事を考えることができます。

そして、自分の次に関心があるのはやはり家族ではないでしょうか。他人の体験よりも自分の子や孫の体験の方が切に感じるはずです。
子供にしても、思春期などには親を疎ましく思う時期もあるかもしれませんが、心の底では自分を育ててくれ、一番関わりの深い親や祖父母に最も関心を抱いているはずです。

だから人は、この一番身近なコミュニティである家族における人間ドラマを通じて、感謝の念や思いやり、親孝行の心といったものが養われるのではないでしょうか。
しかし、農業や内職を通じて親の苦労を近くで見ることができていた昔と違い、核家族化とサラリーマン化、さらに生まれた時から何不自由ない裕福な環境である現代においては、生活の中からそういった大切な心を養うことが難しい状況にあると言えるのかもしれません。

継伝制作にあたっては、第3者がインタビュアーとして間に入る事によって、親子同士の知らなかった想いや体験が浮き彫りになります。
これまでの制作では、家族において親子の隠れた心根の部分や体験を知り合うことで、お互いの感情に変化をもたらし、そこから感謝や尊敬の念といった大切な心が芽生える場面を数多く生み出してきました。

継伝は、現代では触れることが難しくなってしまった家族の人間ドラマを表に現し、それによって家族の新しい絆をつむぐ役割を果たしているのです。